Nonkunのブログ

主にゲーム関係について書いてます

 モンスターハンター2〜RPGのひとつの終着点

正直、前回のブログは『モンスターハンター』について書こうとした際に生まれたものなんですが、あまりに脇道に逸れたので掲載しました。

要は、戦闘シーンだけが全く別ゲームのようになってしまったヌエ的RPGにとって、もうゲームっていうのは物事の表現方法でしかないという結論に行き着いたということです。

あらゆる表現の中のひとつの方法として一人称RPGが生まれただけであって、何もこの表現方法だけを抜き出してRPGと規定する必要はないわけです。しかし、ロールプレイングするのは主人公でありプレイヤーでもあるわけだから、RPGとは一人称表現の別称になってしまった。結局のところ一人称表現以外にRPGは存在しないという結果になりました。

そういう意味で言えば、『モンスターハンター』は紛れもなく戦闘シーンがアクションのRPGです。おまけにシームレスでオンラインでも遊べる。そしてなんと言っても「ストーリーに縛られない」という最近のゲーム批評家が好みそうなハードルすらクリアしているわけです。

ゲームというメディアはほとんどと言っていいほど戦うことを表現してきました。もちろん、ゲームをするということは相手と何らかの勝負をするということを意味するからです。特にテーブルゲームというのは戦うということの最も素朴で本質だけを抽出した表現方法と言えます。

RPGも本質的には与えられた困難と戦うことを意図したゲームに違いないのですが、ストーリー表現に偏ったゲームが人気を博した為、勝敗のシビアさを楽に簡単にせざるを得ないという矛盾が生じてしまった。結果、勝負に勝った気にさせることが目的の八百長がクリエイターとプレイヤーの間に暗黙の了解ではびこるようになりました。

主人公=プレイヤー、死んだらお終いという一人称RPGは基本的にやり直しがきかない。ドラクエのように『死んでしまうとは何事だ』と言って死ぬ前の経験値を持ち越しできれば無駄がないとは思うけど、そうすると築き上げたリアリティが全て崩壊してしまう。本来そんなものはゲーム的に解決すればどうとでもなるんだけど、そんなとこだけ頭が固いわけですよ。

別の理由として、死ぬことはストーリーに大きな障害になるので無かったことにするしかない。サウンドノベルでバッドエンドを引いたようなものです。バッドエンドの先にはストーリーはない。だからゲームは続かないということです。

モンスターハンター』というのはそういったストーリーによるシステム的な縛りを一切排除し、戦うということを主目的に置いたゲームになっている。だからこのゲームは死ぬということがない。クエストに失敗はするが何度でもやり直しがきく。この理由は簡単で、死んで困るというストーリーになっていないからです。なんなら、別のハンターが来たということにしてもいいぐらいです。

モンスターと戦うことが目的であるという設定からハンターが生まれ、そこからハンターらしさを形成する要素(例えればアリストテレスの言う形相のようなもの)を抽出して3DCGで身体(質料)を与えた。形相部分は『リンダキューブ』も同じだけど、戦闘の表現方法においてはアクションゲーム、格闘ゲームの歴史を経た『モンスターハンター』のほうが何倍も上だったということです。

ゲームのセンスを感じる時っていうのは、物事からどのように本質部分を抽出しているのか、その表現方法ではないでしょうか。例えば、野球というのはバットとボールを使わなければ遊べるはずはないんですが、ファミスタパワプロではなぜか野球をしているような気になる。野球を形作っている本質そのものの部分をどのように取り出すかは、まさにクリエイターのセンスにかかっているわけです。

モンスターハンター』にはカプコンのゲーム表現に関する技術が集約され、新しい格闘ゲームとすら呼べるような戦闘表現を実現している。ドラゴンと戦うというドラクエ以来のテーマがこういう形で様々なゲーム的レトリックを駆使して表現されたことは本当にゲームファンとして喜ばしい。特に2(ドス)はこまかいシステム周りを改善して新しい武器、マップ、モンスターと正常進化を遂げ、僕の目にはほぼ完璧に見える。これが100万、200万売れなくてどうするという内容だ。

しかし、まあそこまで売れないわけで。
アイディアだけのゲームっていうのはなかなか売れない。実績がある『モンスターハンター2』ですら50〜60万本ぐらいですか。どうしてもいい大人は「なんでモンスターを倒さなきゃいけないんだ」と頭の中で考えてしまう。つまり、ゲームをする損得勘定をしてしまうわけです。意味があるのかないのか、遊んで知識が増えるのか、というように。

だから『脳トレ』『どうぶつの森』は明確な理由があるから売れる。『モンスターハンター2』は男のロマンに訴えるからそこまで売れない。それでも、そのロマンを追い続けたクリエイターの姿には胸を打たれます。

FF12が200万本売れる理由っていうのは、綺麗なムービーを見せつつ最後まで連れてってくれるんだろうっていう期待感でしょうね。ゲームに対する強度が落ちつつある現在は受け身の娯楽要素がないとなかなか買ってくれないみたいで。ああそうか、エロゲーって最高の受動的な娯楽ですな。ボタン連打で見れるんだから(いろいろと)。

まあしかし、仕事終わって帰ってきた後に「ドラゴンでも倒してくるか」という粋なゲームファンにとって、これほど面白いゲームはありません。まだ剣を握れるあなたにはぜひ遊んでほしいですね。